『ウォーニュレン』
その音の響きに誘われてルウェは真夜中にまたいつもの木へ向かった
なぜだか全く眠たくなくて飛んだ感じからして疲れもないみたいだ。
木に着くとそこにはカーヌがいた
『やぁルウェ、今日はいつもより遅いじゃないか』
『え?いつもよりっていうか、カーヌ?』
『どうしたんだい?昨日も会ったのに久しぶりみたいな顔してさ』
『昨日?……そうだね、そうだった。』
「これは夢だ」
ルウェはなんとなくそう悟った。
それでも目の前で自分に向かってカーヌが話してくれるのが嬉しくて、嬉しくて、
それだけで十分だった
『この間の信じられないほどのすごい雨の日に「セニル」ってトカゲに出会ってね、夢の話をしたんだ』
『へぇ、どんな話をしたの?』
『ルウェは夢の世界はどうやったら行けると思う?』
夢の中で夢の話とは変な体験だな。とルウェは思った。
『夢の世界か…どこだろう』
『僕はセニルに会うまではずっと探してきたんだけどね、
やめたよ』
『なぜ?』
『僕は色々なものに意味を付けすぎてたんだなと思ってね。
彼は言ったんだ。「夢の世界は自由に行き来できないほうがいい」ってね。』
『あぁ…そうかもしれないね』
今自分はおそらく夢の中にいる。
そしてカーヌと話している
それがこの上なく幸せなのはココが奇跡が生んだ世界だからなのだろう
『夢は夢でいい』
カーヌはもう一度静かにつぶやいた
それから一度満足気に頷いて
月のほうへ飛んで行った。
ルウェは小さく『夢は夢、空は空、それから俺は俺。』と呟いて
そして目を閉じた
さよなら
また会ういつかの日まで
おやすみ。
おやすみ。
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【追伸を読む】
『あのさ』
夕つ方、ルウェはまたカーヌに話しかけていた
『あの煙突のから出てる煙、いや湯気?あれってなんていうのかな』
ふわふわ、モクモク、なんか違う。
別に気になるわけじゃない
けれど夕日に照らされたあの煙はふわふわでもモクモクでもない。
ただ、さっき雲が晴れたばかりの真っ赤な空に立ち上る深く、赤く、そして黒い気体。
『相変わらず無口だね』
そこにいる彼は何も話さない、動かない、
見えない。
『ふぅ』
いつものように日が沈んでゆくのを見つめながら息をつく。と。
『ウォーニュレン』
なんとなく、意味はよくわからないけどそんな言葉が浮かんだ
カーヌがいなくなってからたまに浮かぶ音の羅列。
『ウォーニュレンか。あれはウォーニュレンなんだね』
何となく浮かんだそれを喋らないカーヌからの返事として受け取って、彼は寝床へ帰った。
ウォーニュレン。こんな日は夢の中でカーヌに会えそうだ。
今日はいつもより早く寝よう。
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【追伸を読む】
『君、名前はなんて言うんだい?』
『セニルだよ』
『そうか、じゃあセニル。君は夢を見るかい?』
『まぁ、たまに。』
『そこって、君はどうやったら行けると思う。』
『寝て気付いたらそこにいるんだよ』
『まぁ、そうなんだけどさ。あの世界はどこにあるのかと気になってね』
『あんたはどこにあると思うんだ』
『僕はあの世界は宇宙のどこかにあるんじゃないかと思う
いつか、人は自由に行き来できるかもしれないね』
『そうなるとなんか夢は夢じゃないなぁ…』
『夢は夢であって欲しいか
どこにあるかなんて不毛なことだったのかもしれないな』
『まぁ、あるのかもしれないけどね
俺は見つけないほうが良いと思う』
『今日は良い話が聞けたな。
空がこんなに綺麗に見える』
『なぁ、名前聞いていいか?』
『ああ、#*,;ヌ。カ=\だよ。』
『雨で聞こえないだろ、何だって?』
セニルは"彼"の顔を覗き込んだ
『おい、名ま……まぁ後でいいか。』
"彼"は満足そうな顔で眠っていた。
今日はこの雨の中を飛んで来たから疲れたんだろう。
今はそっとしておいてあげよう。
"彼"が起きたらとりあえずなにか食べ物をとって来てやろう
セニルは、彼がどうか良い夢を見られますようにと小さく祈った。
そして温かい彼の隣で目を閉じた。
########
ぴちょん
雨粒がセニルに落ちて来た
『おっと、寝ちゃったか』
空を見上げると雨はすっかり止んで、木の下にも葉っぱを通り抜けて光が差し込んでいた
そろそろ起こしてやろうかと隣を見ると、そこに"彼"の姿はなかった
セニルは小さな舌打ちを目一杯して、それから木から降りた
あっという間の出来事だった。
『あれ自体が"夢"だったのかな』
そうだとしたら夢の世界が実在してほしいような気もしてきた
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セニルは反対側の枝に移ってそっと彼の方を見た。
『はぁ…なんだか意味のわからない奴に飲み込まれそうになるし、なんとか逃げ切ったと思ったら今度は猫、そしてこの洪水か
どこなんだろうここ』
なるほど、少し赤く滲んだ彼の足首はその時の怪我だろう。
気が立っている奴のそばにいるのは遠慮したいが降りれば泥混じりの海。
抵抗をなんとか打ち消してセニルは彼に話し掛けてみた。
『やぁ、すごい雨だね』
『なんだい?今はトカゲと話す気分じゃないんだけど』
『まぁそういうなよ。その足じゃ今は休むしかないだろ?』
『ああこいつか。こいつはもう、治らない。』
『え?』
『全く自分の思うように動かないんだ。』
『…』
『ま、することがないのも事実、話を聞こうじゃないか』
『あ、ああ。…ええと』
『なんだよ、話しかけておいて何もないのかい?』
『いや、軽い話をする気分ではないと思ってね』
『それはそうさ。生きた奴と話すのはこれで最後かもしれないからね』
『…』
『いや、悪い。黙り込ませたいわけじゃないんだ』
フッと笑いながらその鳥は言った
『どれ、じゃあ僕のとっておきの話をしよう』
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【追伸を読む】
しばらく間をあけてロゥはまたルウェに話しかけた
『今日は空が真っ白だね』
『いや、空はいつも同じ色だよ』
ルウェはちょっと自慢げに言った。
『そんなわけないよ。雲があれば白いし、なければ青、夕立の日なんかは黒っぽくなるじゃないか』
ロゥは不思議そうに聞き返した
『空はいつも空色なんだ』
それはカーヌが教えてくれたことだった
『全部空色なんだよ。白でも青でも黒でも、赤でもないんだ。』
ルウェはカーヌの口調をちょっと真似して呟いた。
……………………………
『いいかい、ルウェ。空は僕ら生き物とおなじなんだ。
青だとか、そんな簡単にまとめられるものじゃないんだよ』
『でもカーヌ、青は青だよ』
『うーん、ならルウェ、君は何色だい?』
『何色って……』
『空が青ならルウェはブラウンだよ』
『僕はブラウンじゃないよ』
『そうさ。君は君という名の色でしかない。どれだけ似ていてもみんな違うんだ』
……………………………
『つまり、空は空だから青じゃないんだよ』
長々とした説明を終えたルウェは満足そうに笑った
『うーん、僕には難しすぎるよ。ルウェはなんだかすごいね』
『カーヌに言ってやってよ。ただの受け売りなんだ。実は僕もさっき「白いなぁ」って思ったんだ』
居ないカーヌに向かってルウェは『ね。』と笑った。
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